「食卓の向こう側」 応援団ブログ

西日本新聞「食卓の向こう側」応援団。世の中の「くらし」を明るくします。

【福岡・福岡市】平田喜代美(ひらた・きよみ)助産師

得意分野:

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■プロフィル
母乳研究家・助産婦・育児大学講座理事長
九大医学部付属助産婦学校 卒業
国立福岡中央病院 就職(産婦人科勤務)
国立福岡中央病院 退職
1981年10月平田母乳育児コンサルタント開業
4年間の研究の成果、母乳と哺乳瓶の飲み方の舌の違いを世界で初めて映像的に証明し、NHK等で放送紹介される
受賞:国際ソロプチミストよりWHW賞、福岡県知事賞、第28回福岡県医療功労賞、福岡市民教育賞
著書等:おっぱい110番「母乳育児は地球を救う」、育児ソングCD「おいしいお乳になったかな」、母乳と和食で家中病気知らず・共著、おっぱい110番韓国語版、おっぱいはえらい!!


平田母乳育児コンサルタント おっぱい110番
TEL/FAX 092-715-1836
http://www.oppai-situke110.ecnet.jp/

 

母乳育児の勧め 平田喜代美 少子化対策の原点にも/くらし

 母乳育児が、昭和四十年代ごろから牛乳を元にした人工ミルクに取って替わられたことが、どこかで現代の病理現象と結びついていると私は感じている。
 母乳育児は母子で心を通わせることで、子どもには人間への基本的な信頼感をはぐくみ、母親には母性愛を呼び起こす大切な営みなのだ。
 引きこもりや不登校、いじめなど、子どもを取り巻くさまざまな問題は、乳幼児期に母乳育児を受けなかったことが遠因となって起こっているのではなかろうか。母親の乳幼児虐待も、根っこには人工ミルクの授乳による母子分離のケースがあると思う。
     ◇
 「人間が人間のお乳を飲むという原点を取り戻すことが地球を救う原点」とアピールし、母乳育児を指導する助産院「おっぱい110番」を開業して、二十年以上が過ぎた。母乳育児の大切さが少しずつ理解されてきたように思う。産婦人科の病院などにも母乳外来を設けるところが増えてきている。
 「おっぱい110番」には開業以来、これまでに約一万人の母親が訪れた。母親に対し、よい乳質のお乳をたくさん出してもらえるように桶谷式マッサージを乳房に施し、和食中心の食生活を指導する。乳児が歩くようになるまでは母乳をしっかりと飲ませてもらい、二歳前後で断乳して母子分離をしてもらう。
 この間、心身の発達やアレルギー、しつけなどの育児問題だけでなく、夫婦や嫁姑(しゅうとめ)間の人間関係なども含め、さまざまな悩みの相談にも応じてきた。
 母親たちの学習グループの活動が元になって、育児大学講座とゼミを開設。日本の伝統食作りを習い、オモチャづくりなどを楽しんでもらうなど、総合的に育児を支援している。
     ◇
 ところで、政府は今、少子化対策に力を入れ始めている。その成否は簡単に言えば、女性たちが「育児が楽しい」と思えるような環境を、どうつくるかに尽きる。
 核家族化が進み、頼りの夫は仕事に追われ、母親の多くは育児のすべてを担って悲鳴を上げ、育児ノイローゼの問題も指摘されるようになった。いつでもだれでも利用できる長期・短期の無料託児サービスを整えるとともに、盛んになっている地域の育児サークルをしっかりと支援する必要がある。育児休業法をもっと厳しく運用する手だても大切だろう。
 とくに提案したいのは、母親たちが専門的かつ継続的に母乳育児の指導を受けることができる拠点を地域に数多く整備すること。その上で、母子手帳に母乳育児指導の無料券をつけるなどの行政のサポートも期待したいところだ。
 母乳育児で子どもとの絆(きずな)を深めて育児の楽しさを味わい、多くの母親に子育ての達成感をつかんでもらうことが、遠回りに見えても、少子化対策の原点になると思う。