【福岡・福岡市】馬場 正佳(ばば・まさよし)薬剤師
得意分野:薬
■プロフィル
出身:福岡市東区箱崎
生年:1957年
現住所:福岡市東区箱崎
主な経歴:薬剤師。病院、調剤薬局に勤めるが、父親の死去で家業の薬局を継ぐ。
薬剤師として学校の環境衛生に深く関わるが、子どもたちの喫煙に始まる薬物汚染に心を痛め、学校を中心に喫煙防止や薬物乱用防止の講演を年数十回行っている。
■連絡先
〒812-0053
福岡県福岡市東区箱崎5丁目11-10-5
(有)馬場薬局 本部
TEL:092-409-9073
FAX:092-409-9074
e-mail:kaiduka1688◎(◎を@に)song.ocn.ne.jp
2012年03月30日「聞きたい」より
麻薬や覚せい剤、シンナーなど、薬物汚染にかかわる事件が後を絶たない。特に覚せい剤は第3次乱用期にあるといわれ、暴力団の無差別な密売やはき違えた個人の自由意識などにより、深く社会に広がっている。一度経験したら自力では抜けられないという違法薬物からどうやって青少年を守るか。医師や保護司、教職員OBなどでつくる福岡県薬物乱用防止講習会講師団の一員として、小・中学校などで薬物の危険性を訴える学校薬剤師、馬場正佳さんに聞いた。 (佐藤弘)
―薬物の汚染状況は?
「覚せい剤使用のピークだった戦後すぐの第1次薬物乱用期などと今との決定的な違いは、対象の若年齢化だ。特に福岡県の汚染は深刻。シンナーなどの毒物・劇物使用で検挙補導された少年の数は、2000年から11年連続して全国ワーストだ」
「一度、薬物に手を出すと、四六時中どうやって手に入れようかと薬物のことばかり考えるようになり、勉強も仕事も手につかなくなる。そして高価な薬物を手に入れるために自ら売人になるが、都市部の繁華街には暴力団が仕切る売人がいる。そこで地元に戻って友人や後輩を誘う形で若年層に汚染を広げていく。不法滞在外国人による無差別な売買も増加の一因だ」
―売人の近づき方は。
「覚せい剤ならスピード、MDMA(合成麻薬)ならエクスタシーなどというように、そのものズバリの名を使わずに、隠語を使って呼び掛けてくる。そして、『1度ぐらいなら大丈夫さ』『眠気がとれて勉強ができるよ』『肌がきれいになって、やせられる』などといった甘い言葉で誘う」
「警察や周囲の大人に通報されたら困るから、売人も誰彼なしに声を掛けるわけではない。その判断材料になるのが服装。だから、繁華街に行くときは服装をちゃんとしておけ、というのはその意味だ。調査によると、20歳になるまでに全体の半数が、周囲の誰かが覚せい剤にかかわっているという話を聞き、4分の1が1度は誘われている」
―そんな誘いから若者の身を守るには。
「その怖さを知り、売人や違法薬物であることを見極める目を持たせることと、誘われたときの受け答えを教えておくこと。小、中学校で講演するときはロールプレーイングという手法を使い、私が売人役で声をかけ、児童・生徒が断る。誘われたら話題を変えるとか、『親に叱られ』とか言って断る練習をする」
「もし違法薬物の経験者を見つけたら、病院に入れるしかない。高熱を出した子を抱き締め、愛の力で治そうとしても熱は下がらない。違法薬物に一度でも染まったら、自分の力では絶対に止めることは不可能。死なせたくなかったら警察や保健所など、しかるべきところに相談することだ」
―断固たる態度で臨まねば大変なことになる。
「中毒者はクスリほしさに犯罪を重ね、最後は脳を狂わせて死ぬことになる。薬物汚染が全体の8~10%にも達すると、国家の存亡にかかわる。諸外国で麻薬所持だけで死刑にする国があるのはそのためだ」
「こうした負の連鎖を止める方策の一つが禁煙教育だ。薬物に手を出した未成年のほぼ100%が喫煙経験者。子どもがたばこを始めるきっかけの69%が『大人の気分が味わいたかった』と答えることからしても、最初からたばこを吸わせないのが最も有効だ。だから大人はまず禁煙。それが無理なら、子どもの前での喫煙はやめてほしい」