「食卓の向こう側」 応援団ブログ

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【福岡・福岡市】朝廣 和夫(あさひろ・かずお)九州大学芸術工学研究院環境計画部門助教

得意分野:

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■プロフィル
九州大学大学院芸術工学研究院環境計画部門助教。ふくおか森づくりネットワーク・代表。
昭和45年熊本県生まれ宮崎県育ち。博士(芸術工学)。(株)アーバンデザインコ
ンサルタントを経て、平成8年より九州芸術工科大学助手。ロンドン大学インペリアルカレッジ客員研究員を経て現職。
里山保全、市民参加、航空写真解析をキーワードに教育・研究を行う。実践的な活動を旨とし、
福岡県八女郡黒木町の「国際里山・田園保全ワーキングホリデー」、福岡市の鴻巣山緑地保全地区
で活動する「こうのす里山くらぶ」、里山保全活動の支援を目的とした「ふくおか森づくりネットワーク」
の活動を実施。平成20年3月に開催された「第13 回森林と市民を結ぶ全国の集い」などに携わる。
最近は、NPO法人 日本環境保全ボランティアネットワーク(JCVN)の設立を準備中。

■連絡先
九州大学芸術工学研究院
〒815-8540 福岡県福岡市南区塩原4-9-1
TEL/FAX 092-553-4480
E-mail asahiro(アット)design.kyushu-u.ac.jp(アットを@に変えてください)
個人ホームページ http://www.design.kyushu-u.ac.jp/~asahiro/

 

景観保全とボランティア


失われつつある日本の田園・里山景観

私は「景観保全」、特に緑地の保全を専門にしている研究者です。最近、田舎の人々の考え方が知りたくなり、福岡市近郊の田園環境の中に住まいを移しました。
そこで、景観に対して耳にする言葉は、「景観は金にならん」「自然は他所に行けばいくらでもある」、というような、農林業の生産一辺倒の考え方です。一方で、地域の草刈りや祭り、子供会、中年会等の多数の出事があり、そこで形成される濃密な「世間」が、地域を支えていることでした。この農林業生産重視の考え方と田舎の仕組みは、近代化を経たとはいえ、綿々と続いてきた暮らしであると感じられます。
この伝統的な暮らしが、目の前に広がる美しい田園と里山景観を支えてきた。しかしながら、このような風景は、過疎化・高齢化により徐々に失われつつあるようです。
綿々とつづいてきた田舎の暮らしは、農林業と共に衰退しつつあります。これが日本型の地域問題であり、若者の世間離れが、これを助長していると感じられます。


奉仕という義務、ボランティアという権利

私は、日本を支えてきた世間、農林業、美しい田園・里山景観の保全・再生に対し、西洋型のボランティアという権利意識と市民活動が、人々の田舎に対する知識、風景を美しいと感じる感性、そして、それを守ろうという意識を育む力になると考えています。
なぜ、若者は田舎を離れ、世間や家族との関係を断とうとするのでしょうか。私は、農林業の置かれた経済的厳しさだけではなく、自ら考え、発言し、決断し、そして活動する自由が制限されているからだと考えています。
よく、地域の清掃や役員をボランティアといわれる方がいます。このような地域や学校で行う奉仕活動はコミュニティサービスといいます。実施団体に属する個人は義務として関わるのです。一方、ボランティアサービスとは「私がやりたいからする」自発的な活動です。関わりたくなければする必要はありません。ボランティア精神は個人の意見を尊重することからはじまり、市民として主張する権利でもあると考えられます。


いつでも、誰でも、どこでもできるボランティア活動

本来、地域マネジメントにおいて、コミュニティサービスは、ボランティアサービスに支えられ、より良い協働関係を持つべきだと考えられます。しかしながら、伝統的な仕組みはトップダウンが強く、個人の意見を実現する仕組みが十分に存在しません。また、地域の生活文化よりも生産効率の優先される価値観の中で、農林業の衰退する田園環境に居住する価値は、下がらざるを得ないのではないでしょうか。
地域再生は産業の振興が柱です。しかしながら、新たな柱として環境保全と地域振興を展開する新たな価値観を涵養し、それを進める仕組みと人づくりが必要と考えます。まずは、自ら考え、発言し、行動できる人々を増やすために、いつでも、誰でも、どこでも参加できるボランティア活動を、地域の中に展開する必要があるのではないでしょうか。


ボランティアを支えるプロ集団

私は、ボランティア意識を継続的に育み、その力を景観保全に繋げるために、継続的に支援するプロ集団が必要だと考えています。
例えば、田園・里山景観の保全活動を担うNPO事業体、民間・行政団体は、景観を多面的に保全する制度と計画を検討し、活動フィールドと事業主体を設け、資金と人材を集めることができるでしょう。そこに、地域の人々は、ボランティアとして関与することが可能です。職場や家庭で様々な専門的ノウハウを培っているボランティアは、農林業生産以外の価値観や商品開発の可能性、また、新たな地域づくりを担う力をもたらしてくれると思います。


私が提供できること

私は里山・田園景観の保全に資するため、ボランティアリーダーの育成やボランティア活動の実施・運営、また、雑木林や針葉樹人工林の植生調査や管理活動さらに、地域の景観計画ついて支援することが可能です。ぜひ、私をパートナーとしてご活用下さい。