「食卓の向こう側」 応援団ブログ

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【大分・大分市】本山 秀樹(もとやま・ひでき)食育ネット代表、国東保健所

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■プロフィル
大分県別府市出身。宮崎大学大学院獣医学研究科修了後、1985年に大分県庁入り。竹田保健所、県生活環境部ごみゼロおおいた推進室主幹、県農林水産部おおいたブランド推進課を経て、国東保健所勤務。勤務。獣医師。

■連絡先
大分県農林水産部おおいたブランド推進課
〒870-8501 大分市大手町3-1-1
TEL 097-506-3627
FAX 097-506-1761

食育ネット代表 本山 秀樹さん

 食事をする際、ひと口目を目を閉じて50回かんで食べてみてください。消化がよくなる効果もありますが「どこで、どんな人たちが作ったんだろう」と思いませんでしたか。食べ物がどう作られたかに思いをはせ、その恵みに感謝するのが「食育」の基本です。
 私が食育活動を始めたのは、大分県南部にある竹田保健所に赴任した2002年ごろ。前任地の臼杵では、食中毒発生時のシミュレーションモデルを作成したり、郷土料理を見直す「食のまつり」を開いたりしました。そのころから、地元の新鮮な食材を楽しみ地産地消を図る「スローフード」も気になっていました。
 竹田市では1998年、食文化研究や特産品開発に取り組む半官半民のシンクタンクが設置されていました。地元の保健師や栄養士に「食育を通したコミュニティーづくりをしたい」と言うと、みんなピンときて「やろう、やろう」ということになりました。
 まず手掛けたのは、マグロの遠洋漁業基地の津久見やフグ料理で有名な臼杵の「海の子」と、竹田の「山の子」を引き合わせ、一緒に料理を楽しむ食交流会です。竹田の子どもは、葉と土がついたカボチャやイモを段ボール十数個分、津久見臼杵組は体長約1メートルのバチマグロや旬の魚を用意しました。それぞれの海の幸、山の幸を自慢げに説明する子どもたち。催しが終わるころには、海の子と山の子は肩を抱き合って話していました。ある職員が「これが本当の交流ですね」と目を潤ませていたのを覚えています。
 もう1つ、心に残っているのは、管内にある荻町(現竹田市)の保健師や栄養士と開いた「食と命の講座」。地元産の山草・野菜を使った料理づくりを見ていたら、お母さん方が非常に細かい仕事をしているんです。例えばラッキョウをシソで包んだ口直しの一品を作ったり、高齢者がかみやすいようにたくあんに筋を入れたり。大分は海や山、きれいな水に恵まれた土地。地元産品にこだわり、うまく利用しようとする精神は、小藩分立の歴史とも関係するのでしょうか、根付いているように思います。
 そうした活動を基盤に、私は04年1月、全国の食育団体と交流を図る「食育ネット」を仲間と立ち上げました。ミソ作り体験、「みそ汁カフェ」などの催しでは、栄養学で重視されてきた「カロリー」「1日30品目」という言葉ではなく、「地元の旬の食材をゆっくり、楽しんで食べること」を目指しました。
 大分の食文化を九州、全国に発信しつつ、高齢者から子どもたちへ、食に対する意識や技術を探り、受け継ぐ活動を続けていきたいと思います。 (別府支局・飯田崇雄)