「食卓の向こう側」 応援団ブログ

西日本新聞「食卓の向こう側」応援団。世の中の「くらし」を明るくします。

【山口・山口市】園田 純子(そのだ・じゅんこ)山口県立大学栄養学科講師

得意分野:

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■プロフィル
山口県立大学栄養学科講師

連絡先:
〒753-8502 
山口市桜畠3丁目2-1
山口県立大学
看護栄養学部栄養学科
園田 純子
083-928-2454(fax)
E-mail:sonoda@(あっと)yamaguchi-pu.ac.jp

『食』をになう大学での取りくみ
山口県立大学の「お弁当の日」~

 山口県立大学では、現在月2回のペースで「お弁当の日」を実施しています。多くの大学で行っている一品持ち寄り方式で、20年4月からはじまったこの「お弁当の日」も、やがて3年目を迎えます。
 私の前任校は九州であったため、平成16年から西日本新聞の『食卓の向こう側』を担当科目の中で教材として使っていました。その中での「弁当の日」の記事、そして竹下先生との出会いが直接のきっかけですが、何よりも新しい赴任先ですぐに実施できたのは、学生の熱い思いがあったからこそでした。

「お弁当の日」のはじまり
 20年4月、卒論生2人と『食卓の向こう側』を使って現代の食生活の問題点について話していた時に、「弁当の日」の紹介をしたところ、彼女らは是非やりたいと目を輝かせました。栄養学科は、全員が管理栄養士をめざし食について学んでいるのですが、知識をもっているはずの栄養士のたまごたちも、日常的に満足できる食生活を送っている人ばかりではありません。自分たちを含め、レポートやバイトに追われ、食事をおろそかにしている身近な学生を憂いてのことでした。2人は、さっそく「弁当の日」に関する資料を自分たちでも集め、賛同する友人や後輩を誘い、準備にとりかかりました。天気と食は西から変わるとの名言がありますが、4月の下旬に記念すべき1回目の「お弁当の日」を行い、本州の大学として初めての実践校となりました。九州から持っていった「弁当の日」の種が山口の地に芽吹いたのです。
栄養教諭をめざし、食育活動に非常に関心を持っている学生が卒論生としてきてくれたというのはラッキーだったといえます。ただ、私たちはこの取り組みを卒業研究のテーマにはしないこととしました。それは、学生の自由な発想で、「弁当の日」を考え、自分たちらしく発展させていってほしかったからです。また、「弁当の日」にスタッフとして積極的にかかわりたいという学生を、たくさん受け入れたいという思いもありました。そこで、私はただサポートに徹することとしました。山口県立大学の「お弁当の日」は、すべて学生の手により、自主的に企画運営され、今日にいたっています(なお、県大では、自分たちらしさを出したいと、弁当の日に「お」の1字をつけて、「お弁当の日」と名付けています)。

YPUドリームアドベンチャープロジェクト
 こうして始まった「お弁当の日」ですが、自分たちの周りだけでなく、もっともっとたくさんの人に知ってもらいたいと、さらなる飛躍を試みました。それは、YPUドリームアドベンチャープロジェクトへの参加でした。このプロジェクトは大学生活をさらに楽しく豊かにするために、学生が自主的に企画・運営する独創的で魅力的なプロジェクトに対して、大学が費用を補助することで夢の実現を支援する大学独自の事業です。
 再度プロジェクトに向けて、3年生と4年生の有志7名が集まりました。目的や活動内容を吟味し、企画を立てて応募したところ、学内外の審査委員の方々の関心を集め、見事に採択され、予算もついたのです。「お弁当の日」をするのに別にお金はかからないだろうと思われる方もいるかもしれませんが、この予算があるおかげで、企画がより現実味を増し、また、予算配分や、講演会に向けての対外的な交渉等が発生するため、学生にとっては非常に良い経験となったように思います。
 なお、YPUドリームアドベンチャープロジェクトにおける「お弁当の日」の目的は、『大学生の食意識向上をめざした交流の場の提供』とし、その活動内容の大きな柱に、①「お弁当の日」の充実(広報活動・「お弁当の日」文庫の設置)、②他大学で行われる大学生合同の食育ワークショップへの参加、③県大生が企画する食育ワークショップの開催、の3つを掲げました。
 目標の定まった学生の力は、限りを知らず、ポスター・掲示板作りとその才能を発揮し、食育ワークショップのためにファシリテーター養成講座にも参加するというほど目を見張るものがありました。ともあれ、思わぬ後押しにより、「お弁当の日」は大学の中に広まりを見せていくこととなったのです。

「お弁当の日」の実践を通じて得られたもの
 ~学年・学科をこえた広がり~

 現在、お弁当の日には、1年生から4年生まで毎回20~30人ほど集まります。後期が始まった10月はみな待ち遠しかったのか、2回とも30人を上回っていました。広報は、前回の報告と次回の予告を兼ねたポスターをカラーで作成し、学内10か所ほどに掲示しています。参加者はどうしても栄養学科が多くなってしまいますが、ポスターを見て、あるいは友人やサークルを通じての口コミで、国際文化学科、看護学科といった他学科の学生も来ています。また、大学事務職員の方や学長の参加もあり、学年をこえ、学科をこえ、教職員や学生の交流も深まっています。
 昨年度より、大学のホームページにも取り上げられているためか、新入生や編入学生の中には大学に入ったらぜひ参加したいという学生も見られます。また、本年度からはブログ『お弁当の日ひろがれ!山口県立大学』を開設したことをきっかけに、外部の方との交流も始まりました。

『食』を専門とする学生が実践する意義
 大学の、すべての学生に台所に立つ機会を増やそうという思いで行っている「お弁当の日」ですが、『食』を学ぶ学生だからこそ、より「お弁当の日」に関わってほしいと切に思います。西日本新聞の佐藤弘記者がよく「食を教えるか、食で教えるか」と言われていますが、栄養学科の学生は、卒業後、病院や施設で栄養士として働くほか、学校栄養士や栄養教諭として子どもたちの前に立つ人もいます。つまり、『食』で教えるスキルを身につけておかなければならないのです。専門性をもったものとしての使命がそこにあるのではないでしょうか。「弁当の日」の活動は、21年度の食育白書にも取り上げられ、これからますます実践校も増えることでしょう。将来の「学校の食事」を担う人材を育てている専門校には、ぜひ取り組んでほしいと願ってやみません。

もっと広がれ「お弁当の日」!!
 竹下先生の提唱された「弁当の日」により、子どもたちは「くらし力」、すなわち、自立するためのさまざまな力を身につけていきますが、山口県立大学の学生たちは、弁当作りからだけでなく、まさに「お弁当の日」の活動を通じて、実社会で身につけるべき実践力を学び続けているのだと思います。
現在、山口県での「弁当の日」の実践校はまだ4校ですが、食を学び、「お弁当の日」を知った県大生が、きっとそのすばらしさを県内に、そして全国へと伝えていってくれることでしょう。
 もっと、もっと、広がれ、「お弁当の日」!!