「食卓の向こう側」 応援団ブログ

西日本新聞「食卓の向こう側」応援団。世の中の「くらし」を明るくします。

【福岡・行橋市】内田美智子(うちだ・みちこ)助産師、内田産婦人科医院

f:id:shoku-taku:20160223170800j:plain

■プロフィル
出身:大分県竹田市(旧荻町
生年:1957年
現住所:福岡県行橋市
主な経歴:
国立熊本病院附属看護学校、国立小倉病院附属看護助産学校助産師科卒業。
福岡赤十字病院産科勤務を経て、1988年、福岡県行橋市にて、産婦人科医の夫とともに内田産婦人科医院を開業。
2004年、九州思春期研究会設立。事務局長をつとめる。
また、文部科学省委嘱、性教育実践調査研究事業委員を務め、現在に至る。

■問い合わせ先
内田産婦人科医院

http://ww2.tiki.ne.jp/~uchida230155/

 

「生きることは食べること」と
「食」の大事さを熱く伝える。

 性教育は「生教育」。人は人生の中で、男であること、女であることを意識して生きています。その「生」をどう生き抜くかの一部が性です。
 私は思春期の子どもたちに10年間かかわり、「食」に行き着きました。食卓の豊かさがいかに子どもたちをはぐくんでいることか。
 思春期の子どもに必要なのは「今の自分でOK」という自己肯定感です。中高生という思春期の出口にいる子どもたちは、とかく自分を否定しがちです。でも、大事なときに自己判断がきちんとできるのは、「生まれてきてよかった」と自ら思える子どもたちなのです。そんな子は1人でごはんを食べるときも「いただきます」と言えます。長い時間をかけ、そう言えるようにしつけた親の存在があるからです。

 ある意識調査によると、家庭での日常会話が少ない子どもは、性体験をする年齢が低い傾向にありました。女の子は中絶の繰り返し。目の前にいる彼がセックスだけが目的のひどい人間でも、彼女に居場所がなければ、そうなるのです。そして、「子を産めば彼を引き留められる」と信じて出産を選択しています。

 産婦人科にやってくる中高生は、性のトラブルを抱えています。来る前になんとかできなかったのでしょうか。こんな子どもたちを育てている親をサポートしなければなりません。

 若者の間では性感染症が急増しています。性体験は若年化し、15歳未満の出産もあります。「田舎は大丈夫」と思うかもしれませんが、どこも傾向は変わりません。

 早すぎる性体験を1年でも2年でも遅らせる決め手は「ちょっと待てよ」と踏みとどまらせる「敷居」です。つまり親子のコミュニケーションであり、それを培うのが家庭の食卓です。遅刻してもいいから、朝食は必ず食べさせてください。食卓の豊かさと成績は比例します。成績のいい子はきちんと朝食を食べています。ごはんとみそ汁が、ベストです。

 「私はあなたを愛するために生まれてきました」

 これは英国のロックバンド「クイーン」の曲のタイトルです。こんなすてきな言葉を、実感する瞬間があります。分べん室でわが子を抱いた母親たちは、「私はこの子を産むために生まれてきた。この子のためなら何でもできる」。そう思うのです。

 私は年に約60回、学校で講演しますが、必ず子どもたちに言い聞かせます。「この曲名のような思いでいるのがみんなのお母さんなんですよ」と。

 家庭にしかできないこと、学校の役割、地域社会の皆さんができることがあります。自分の家庭にいなくても、隣や地域にいる、こんな子ども、親たちを支えていくことが必要です。あらゆる年代で生教育に取り組む。それが、私たちに求められています。