「食卓の向こう側」 応援団ブログ

西日本新聞「食卓の向こう側」応援団。世の中の「くらし」を明るくします。

【大分・佐伯市】松木喜美子(まつき・きみこ)管理栄養士・専門学校栄養職員

得意分野:

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■プロフィル
出身:大分県佐伯市
生年:1949年
現住所:大分県佐伯市
主な経歴:別府大学短期大学部卒業。日本給食指導協会実務研修所、別府大学女子寮、料理教室(府内クッキングスクール)勤務を経て、1975年に大分県学校栄養職員に採用される(県費学校栄養職員の試験採用第1号)。以来34年間にわたって、各市町村の小中学校で給食づくりに携わり、現在、佐伯市にて専門学校栄養職員として食育の推進や地元食材の活用促進に向けて奔走中。同市「食育推進会議」の顧問もつとめる。平成21年、佐伯城南中学校にて「弁当の日」を実践。今後もその継続と普及拡大をめざして驀進する、「弁当の日」バックアッパーの新たな旗手。座右の銘は「鶏口となるも牛後となるなかれ」。

■問い合わせ先
佐伯市役所企画課「総合政策係」
TEL 0972-22-3486

 

想い続けた永年の願い…
すべて「弁当の日」に凝縮されている!

  自分は何をどう食べれば健康でいられるのか…
  まずは、それを知ってほしい。
  それを知ったら、選んでほしい。
  選んだら、つくってほしい。調理してほしい。

 これが、栄養士として働くなかで、多くの子どもたちや保護者を見ながら、私が想い続けてきた永年の願いです。
 時代の移り変わりとともに、子どもたちを取り巻く環境も大きく変貌を遂げました。子どもが「困る場面」がなくなりました。知恵をしぼったり、ものをつくったりする場面が圧倒的に少なくなりました。一昔前までは、必要に迫られて常識的に覚えてきたことが、「便利さ」の陰で忘れ去られようとしています。そして、暮らしの中で力をつけていくことや身につけるべきことを知らない子どもたちが、どんどん大人になっていきます。そしてそして、そんな大人が、やがては親になってしまいます…。大切なこと、覚えなきゃいけないことを置き去りにしたまま、新たな命を育もうとしているのです。大人として、親としての責任は、いったいどこで果たしていくのでしょうか。30年以上「食」の現場で働きながら、自分の願いがこんなにもちっぽけであることに、正直、歯がゆさを覚えます。

芽吹きのとき…
その生命力に感動

 自宅の近くに畑を借り、15年ほど前から農作業のまねごとに励んでいます。休日だけのにわか農家。でも、栄養士として食べものの「育ち」を知っておく必要があると思って手掛け始めました。もともと短気な性格。きっと農作業は向いてないだろうなと感じていました。ところが…、畑いじりは思いのほか楽しくて。もちろん、素人が取り組む週末菜園だから気軽に楽しめるのであって、農家の方のご苦労が分かるとは当然、思っていません。
それでも、命を育む作業を手掛けることの喜びは多いに味わっています。
私は、種をまいたあと、芽が出てくるところが好き。その力を見るのが大好きです。人が手を掛けなきゃいけないところは、子育てに通じているとも思います。普段は、邪魔で邪魔で仕方がないはずなのに、なぜか雑草にほれぼれするときもあります。精一杯の姿に生命力を感じるからだと思います。
人間にとって命の源である「食」。その最前線で働くなかで、見てきたこと、感じてきたことが、今後の健康づくりや地域づくりの一助になれば幸いです。

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「食べること」は、「生きること」  
 仕事に就いた頃は、「おいしい給食」を提供し、児童生徒には残さず食べようと声をかけ、戻ってきた食缶が空っぽになっているのを見て、次はどんな給食を作ろうかと考えて仕事をするのが楽しかった。給食は、「学校のオアシスであり、だれもが笑顔になれる時間です」といってくれる先生や子どもたちがそこにいた。頑張れば、子どもたちの笑顔にいっぱい出会えるすばらしい仕事だと、調理員とともに安心・安全な手作りの給食づくりに励んだ。

 あれから、30数年。
安心・安全な給食を作り続けていることに変わりはないのだが、いろんな意味で「給食」を取りまく環境が変わってきた。単独調理場からセンター化へ。正規調理員から臨時調理員へ。直営から民間委託へ。家庭でも、生活時間の深夜化。朝食欠食者の増加。家庭力の低下等々。さらには、給食費の未納問題まで。
 
 私たちが、動・植物の命をいただいて自分の命にかえて生きている現実は今も昔も変わらない。しかし、飽食の時代に育つ子どもたちへ「残さずに食べよう」「もったいない」といっても、空を切るような手応えのなさを感じる。

 You are what  you  eat ( 食べたものが 私になる )
とするならば、自分への一番のご褒美は、しっかりした食事。
食品を選択する目を持ち、調理する力を身につけ、食べ物本来の味がわかり、動・植物の命に感謝する謙虚な心を持ち、周りの人と楽しく食事をする。自分の健康と食事の関わりを理解し、実践しよう。健康は、自分が自分に贈ることのできる最高のプレゼントである
と、これまでも生徒や保護者にお便りや講演・授業などで話してきた。

 しかし、どのくらい、実践する人がいるかまではわからない。きっと、「いい話を聞いた」で終わっているのが現実だろう。家庭の食事なんてそんなに簡単にはかわらないものだということもよくわかっている。

そんな時、竹下和男先生の「弁当の日」の話を聞き、「これだ!」と思った。「弁当の日」と出会って4年目にして所属校で実施することができた。子どもにつけたいと思っていた力が、「弁当の日」で実践させることができると強く感じた。子どもに「生きる力」を身につけさせる効果的な実践活動だと思う。

 退職後は、「食と健康と農とエコ」を結びつけ、畑を耕し自産自消生活を実践しようと楽しみにしている。